「プラスチックは環境に悪い」はもう古い? 進化したバイオプラスチックは私たちの生活と地球の両方を救うかもしれない

コラム

近年、環境負荷低減の観点からプラスチック製品の使用を抑制しようという動きが強まっています。
レジ袋有料化やプラストローの廃止など、私たち消費者にダイレクトに影響する社会の変化が訪れ、プラスチック問題が「自分ごと」になりつつある方も多いのではないでしょうか。

一方で、環境への配慮と利便性の追求は相反関係になることも多く、その両立は永遠のテーマとも言えます。
たとえば、プラストローの代わりに登場した紙製ストローは、分解されやすく地球にやさしい素材とされていますが、飲み心地に関しては課題も指摘されてます。
2025年2月には、トランプ大統領が紙ストローの性能を批判し、ストローをプラスチック製に戻すという新たな大統領令に署名したことも報じられています。

プラスチックの利便性はそのままに、地球環境へ与えるマイナス面をクリアできると期待されているのが、バイオプラスチックです。
私たちの生活を豊かにしているプラスチック製品がこのままなくなってしまうのかどうかは、バイオプラスチックの技術開発にかかっているのかもしれません。

日本国内で加速する「脱プラスチック」政策

近年は海洋プラスチック問題などがメディアで取り上げられることも増え、プラスチックによる地球への環境負荷については、すでに広く認知されています。
石油由来のプラスチックは、気候変動の観点からも問題視されており、世界中で脱プラスチックの機運が高まっています。

プラスチックの使用抑制に関して、特に消費者に大きなインパクトを与えたのが2020年に開始されたレジ袋有料化ではないでしょうか。
それ以前からエコバックの利用は推奨されていましたが、レジ袋有料化は消費者に経済的負担を課してレジ袋を削減する制度です。

さらに、ここ数年でさまざまな大手飲食チェーンが、相次いでプラストローの全廃を宣言しています。
2022年4月からは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」も施行され、フォークやスプーン、飲料用スプーンなどの特定12品目を使用する事業者に対して排出抑制が義務付けられました。

脱プラスチックは消費者に受け入れられているのか

社会から排除されてわかったプラスチックの有用性

脱プラスチックによってレジ袋やプラストローの使用を制限されたことで、かえってその利便性が際立ってしまったのではないかというのが筆者の個人的な感覚です。

小学生の子どもが家にいると、「ビニール袋」「ゴミ袋」の文字が連絡帳の持ち物欄に頻繁に現れます。
図工でつくった作品を持ち帰ったり、遠足でどんぐりや落ち葉を集めたり、水泳で濡れた着替えをいれたり、折りたためて軽くて衛生的、さらに持ち手もあるプラスチック製のレジ袋は大活躍です。
たった1泊2日の宿泊学習でも、雨具をいれたり、汚れた洋服をいれたりするために、「ビニール袋」を合計6枚用意するように学校から指定があり、結局さまざまなサイズのレジ袋を購入することになりました。
なんだか、スーパーマーケットでもらったレジ袋をストックして、家庭内で再利用していた時の方が、よっぽどエコだったのではないかと感じています。

プラストローの代替として登場した紙ストローは、飲み心地が不評なうえに、折り曲げられないから子どもには不向きで、100円均一で購入した100本入りのプラストローを自宅に常備していました。
プラスチックの利用を減らさなければならないというのに、まさに本末転倒と言ってもいいでしょう。

このように書くと環境への意識が低いのではないかと受け取られてしまいそうですが、筆者も二児の母として、また環境問題を題材に取り扱うライターとして、次世代への責任を持って地球環境に配慮した生活を送っているつもりです。
プラスチックの包装容器は洗って分別し、マイボトルを持ち歩き、海洋プラスチック問題を引き起こしているポイ捨てなど、人生で一度もしたことがありません。

しかし、結局いち生活者にとっての環境配慮行動は、自身の生活とのバランスのうえで成り立っています。

思い起こせば、紙おむつから始まり、落としても割れないプラスチック製の食器、拭き取りが簡単なナイロン製の食事用エプロンなど、プラスチックとともに子育てをしてきました。
安全で快適な生活を送るためには、軽くて丈夫で耐水性のあるプラスチックの恩恵を受けずにはいられないと感じています。

レジ袋有料化は本当に私たちのライフスタイルを変えた?

レジ袋有料化の真の目的は、レジ袋の使用量を減らすことだけではなく、これまでなにげなくもらっていたレジ袋を有料化することで、環境への意識を高め、使い捨てプラスチックに頼り切った国民のライフスタイルを変革していくことです。
政府も、個人の意識のみに頼ったこれまでの取り組みに限界を感じているからこそ、法規制によって半ば強制的にプラスチックを生活から排除する方向に舵をきったのでしょう。

レジ袋有料化は一定の成果を見せており、令和5年度消費生活意識調査では、「実践しているエシカル消費につながる行動」として、「マイバッグ・マイ箸・マイカップ等の利用」と回答した人がもっとも多くなっています。

消費者がおこなっているエシカル消費につながる行動
出所)内閣府「令和5年度第3回消費生活意識調査」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_003/assets/consumer_research

一方で、レジ袋を社会から排除したところで、環境問題は解決しないのではないかという批判の声は、SNSなどでも散見されます。
すでに施行から5年経った現在でも、レジ袋有料化への反発の声は根強く残っているようです。

そして、エコバックを使用する人が増えたことで、エコバッグがレジ袋の代わりに大量生産・大量消費されている印象も拭えません。
ファッションアイテムのひとつとして、今やエコバックは街中にあふれています。

レジ袋有料化は、本当にプラスチック使用抑制の啓蒙・啓発ができているのでしょうか。
やはり、疑問が残ります。

環境問題を化学の力で解決するバイオプラスチック

バイオプラスチックの登場でプラスチック回帰は進むのか

レジ袋有料化が始まった後も、買い物で無料のレジ袋がもらえる機会がたまにあります。
無料でもらえるレジ袋には、「植物性プラスチック25%使用」「バイオマス素材30%含有」「植物由来の原材料を配合している」などの記載があります。

環境にやさしい素材でつくられた無料レジ袋(筆者撮影)

これは、レジ袋有料化の制度において、バイオマス素材などの環境性能の高い素材を有料化の対象外としているためです。

植物などの有機資源を原料とするバイオプラスチックは、CO2排出抑制に貢献し、限りある化石資源の使用を削減することにつながります。
バイオプラスチックはレジ袋だけでなく、ほぼすべての石油由来のプラスチック製品の代替素材にできると期待されています。

2025年には、スターバックスジャパンが紙ストローを廃止してバイオプラスチックのストローを導入したことで、注目を集めました。
このバイオプラスチックは、ただバイオマスを原料としているだけではなく、微生物の関与によって最終的に二酸化炭素と水に分解される「生分解性」という特徴をもっています。
つまり、通常のプラスチックと同じように使用でき、自然界では分解されないという石油由来のプラスチックのマイナス部分を補うことができる素材です。

海の中でも分解できる進化したバイオプラスチックとは

生分解性プラスチックの研究は近年進んでおり、海洋プラスチック問題の解決に寄与する海水中での分解を実現した製品も実用化されています。

スターバックスで採用されているバイオプラスチックもその一つで、微生物が合成するPHA(ポリヒドロキシアルカン酸)の一種であるPHBHが使用されています。
このPHAとは、微生物が細胞内に作り出す天然由来のポリエステル樹脂で、土壌中や海、川、池などの水中にいる微生物によって完全に分解されるため、石油由来のプラスチックに替わるもっとも優秀な素材のひとつであると考えられています。
2025年5月には、奈良先端科学技術大学院大学率いる研究グループが、世界で初めてPHAの合成酵素の全体構造を解明することに成功しています。

研究で明らかになった二量体型PHA合成酵素の立体構造
出所)奈良先端科学技術大学院大学「世界初、生分解性プラスチック原料PHAの合成酵素の全体構造を解明」
https://www.naist.jp/news/files/250516.pdf

これまで解明されていなかったPHAの合成メカニズムが明らかになったことで、合成酵素の人工的な改良が可能となり、PHAをより効率的に量産できるようになると見込まれています。
PHAは優れた生分解性に加えて生体適合性も高いため、容器包装だけでなく、農業や医療の分野でも活用できると期待されています。

テクノロジー×個人の行動の相乗効果が持続可能な社会をつくる

プラスチックは他の素材と比較しても使い勝手がよく、そして安価に入手できてしまいます。
環境に悪いことはわかってはいても、プラスチックを完全に生活から排除したライフスタイルを貫くことは、現実的ではないでしょう。

環境に配慮した行動をおこなうとき、どのくらい生活を変えるべきか、不便を受け入れ、妥協するべきかは、個人の環境意識に委ねられています。
未来の社会よりも目の前の暮らしを優先してしまっても、それはある意味当たり前のこと、だからこそ構造上の問題を解決する技術革新が必要とされています。

バイオプラスチックが性能面や価格面で石油由来のプラスチックの完全な代替素材として大量生産されるようになれば、利便性と環境負荷低減の両立が可能になります。
環境問題を個人まかせの理想論で片付けず、テクノロジーが力強く後押しすることが、持続可能な社会を実現する現実的な一歩となるのではないでしょうか。

石上 文
広島大学大学院工学研究科複雑システム工学専攻修士号取得。二児の母。電機メーカーでのエネルギーシステム開発を経て、現在はエネルギーや環境問題、育児などをテーマにライターとして活動中。