加齢臭はなぜ発生する?防止できる? 分子レベルで突き止めてみよう

コラム

中高年になってくると、特に男性には気になる「加齢臭」。

「おじさん臭い」と言って、思春期の娘から洗濯物を分けてほしい、とまで言われてしまうと結構なショックを受けることと思います。

また「おじさん」世代だけではなく、若くても汗の臭いはあります。ただ、その発生メカニズムや原因物質は全く異なります。「加齢臭」と呼ばれるのは40代後半あたりから60代にかけて放出が始まる、ある化学物質です。

いわゆる「加齢臭」はどのように発生するのか、予防方法はあるのかについてここでご紹介していきます。

年齢ごとに変わる体臭の種類と原因

そもそも「におい」とは、モノなりヒトなりが放出する化学物質が誰かの鼻に入ることで知覚されるものです。例えば尿が臭うのは体内で毒素が分解された結果に生じるアンモニアによることはご存知の方は多いことでしょう。

同様に男性の体臭にも、化学物質の放出が関係しています。ただし、歳を重ねるにつれて原因物質と、周囲からの臭いの感じ方が変化していきます。

(出所:パナソニック「汗臭からか異臭まで 年齢で変わる体臭の主成分を脱臭」)
https://www.panasonic.com/global/consumer/nanoe/ja/topics/250807.html

「生ゴミの臭い」とはちょっと酷な言い回しのような気がしますが、10代から60代まで、それぞれ臭いの原因物質と周囲の人の感じ方が異なることがわかります。
「加齢臭」について言えば、原因は「ノネナール(2-ノネナール=C9H16O)」という物質であることがわかっています。

加齢臭が発生するメカニズム

この2-ノネナールはどのように毛穴に生成され、体外へと拡散されていくのでしょうか。

実際には、以下のようなメカニズムになっています。キーワードは「酸化」です。

1)まず、皮脂腺からは皮脂が分泌されています。年齢を重ねるごとに、皮脂に含まれる脂肪酸「パルミトレイン酸」が増加していきます。

2)大気中の酸素や過酸化脂質※により皮脂が酸化されます。
※過酸化脂質=酸素と結合した(酸化された)脂質。過酸化脂質の生成は紫外線や熱により加速される。過酸化脂質は活性酸素の発生源となることから、他の物質を酸化すると言われている

3)皮脂の酸化に伴いパルミトレイン酸が酸化分解され、2-ノネナールという成分に変化します。これが「加齢臭」の成分です。

(出所:マンダム「においの基礎知識 加齢臭」)
https://www.mandom.co.jp/sweat-smell/knowledge/knowledge-smell-overage.html

なお、男性に加齢臭が多いのは、2-ノネナールの分泌は男性ホルモンで亢進し、逆に女性ホルモンで抑えられるためです。

加齢臭には発生しやすい場所がある

なお、体には加齢臭が生じやすい場所があります。

胸元や背中といった体幹部、首や耳の後ろ、そして頭皮です。
これらの部位に共通するのは皮脂の分泌量が多いということです。

(出所:ロッテ WELL PALETTE「加齢臭とは?発生のメカニズムや原因、予防・対処のポイントを解説」)
https://wellpalette.lotte.co.jp/post/491

ストレスでも臭いが発生する?

また、ストレスが原因で体臭が発生することもわかってきています。

資生堂の研究によれば、緊張によるストレスで発生する臭い成分があるということです。人がそのような環境に陥ると硫黄化合物のような特有な臭いが発生するというのです。

この現象を科学的に確認するために、以下のような実験が行われました。「インタビューストレス」というもので、初対面のインタビュアーからの質問に20分間回答し続ける試験です。

その結果、リラックスしている時と比べて、ストレスホルモンと言われるコルチゾールが唾液中で増加することがわかりました。「ストレス臭」を強める原因になる物質です。

体臭が関係する病気に注意!

なお、ひとくちに体臭といっても、必ずしも加齢によるものとは限らないということには注意が必要です。

口臭や体臭は、体内の状態に応じて変わります。例えばアルコールを飲み過ぎると、吐く息が熟れた柿のようなにおいになり、体全体も酒臭くなる。ニンニクたっぷりの焼き肉を食べた後は、口臭も体臭もニンニク臭くなる、といった具合です。

ただ「臭い」には、様々な病気が潜んでいる可能性があるのです。実際、日本では明治時代までは当たり前のように病気を見極めるために臭いを判断材料にしていたといいます。
実際に、以下のような病気と体臭の関係が言い伝えられています。

糖尿病甘いにおい、甘酸っぱいにおい
胃の障害酸っぱいにおい、卵の腐ったにおい
腎機能の障害アンモニアのにおい
肝機能の障害ネズミ臭、ドブのようなにおい
痛風古いビールのにおい
ひどい便秘便のにおい
慢性副鼻腔炎(ちくのう症)腐ったにおい
メープルシロップ尿症メープルシロップの甘いにおい
トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)魚が腐ったにおい
フェニルケトン尿症カビのにおい
歯周病腐ったにおい
ペスト青りんごの腐ったにおい

さらにはがんにも独特の臭いがあることがわかっており、探知犬を利用して早期発見に役立てようというアイデアも出ています。

加齢臭はどう予防する?

さて少し話は外れましたが、最後に加齢臭の予防方法について考えてみましょう。

まず加齢臭の発生しやすいところは丁寧に洗うことです。背中の洗い流しには注意しましょう。消臭成分が含まれたボディソープを使うのがベストです。
次に、加齢臭は先ほどご紹介したように皮脂と原因物質の融合で生じますから、皮脂をこまめにシートなどで拭くことです。
また、加齢臭は衣類にも蓄積していきます。洗濯できないスーツのジャケットなどには衣類用の消臭スプレーを使うのもひとつの方法です。

また、上記のように様々な体の状態が体臭に反映されるとなれば、食生活にも注意が必要です。加齢臭が化学物質の「酸化」で生じているわけですから、抗酸化作用のある食べ物を積極的に摂取するというのも良いかもしれません。

いずれにせよ、加齢臭は自分では気づきにくいやっかいなものです。

ある程度の年齢になれば避けられない可能性が高いものとして、原因物質の除去や体内環境に気を使うようにしていきたいものです。

清水 沙矢香(しみず さやか)
2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。
趣味はサックス演奏と野球観戦。