ファストフード店で手にする揚げたてのフライドポテト。一口かじれば、外はサクッと香ばしく、中はホクホクとした甘みが広がります。
しかし、家でしばらく放置して冷めてしまったポテトを口にすると、どうでしょうか。あの感動はどこへやら、シナシナでパサついた「残念な物体」へと変貌してしまいます。
なぜフライドポテトは、冷めるとこれほどまでに不味くなってしまうのでしょうか。 その裏には、ジャガイモの主成分である「でんぷん」の劇的な構造変化と、水分の化学がありました。
ポテトの旨味の秘密は「アルファ化」にあり
生のジャガイモに含まれるでんぷんは、分子同士が固く結びついた「β(ベータ)でんぷん」という状態で存在しています。このままでは人間は消化吸収しにくく、食感も美味しくありません。
ところが、油で熱を加えることで状況を一変させます。
加熱されたでんぷんは内部の水分を吸収し、分子の結びつきが緩んで大きく膨張します。この構造変化こそが「アルファ化(糊化)」です。
揚げたてのポテトの表面は、高温の油によって水分が素早く飛ぶことでカリッとした不溶性の皮膜を作ります。一方で内部は、アルファ化したでんぷんが水分をぎゅっと抱え込み、あのアツアツで滑らかなホクホク感を生み出しているのです。
冷めたポテトを襲う「ベータ化」とは
ところが、この美味しさの黄金期は長く続きません。
ポテトの温度が下がるにつれて、でんぷんは別の顔を見せ始めます。
解き放たれていたでんぷん分子が再び規則正しく集まり、元の固い構造へと戻ろうとします。これが「ベータ化(老化)」と呼ばれる現象です。
ベータ化が進む過程で、でんぷんはそれまで内部に抱え込んでいた水分を外へと追い出し始めます。ここから食感がパサパサになり始めます。
内部から染み出した水分は、せっかくカリッと仕上がっていた表面の皮膜を内側から濡らし、シナシナの湿気た状態に変えてしまいます。そして水分を奪われた内部は、みずみずしさを失ってボソボソ・パサパサの食感へと成り下がってしまうのです。
科学が教える!冷めたポテトの復活劇
ベータ化してしまったでんぷんを完全なアルファ化の状態に戻すことは容易ではありません。しかし、食感を低下させている「表面に回った水分」に着目すれば、科学的に復活させることが可能です。
みなさんも「電子レンジでフライドポテトをチンしたら、なぜかおいしくならなかった」経験はないでしょうか。電子レンジで温めると、蒸気が全体に回って、ポテトはさらにシナシナになってしまうのです。そこでポイントとなるのが、「表面の水分をいかに素早く蒸発させてカリっとさせるか」です。
● 解決法1 トースターを活用する
アルミホイルの上にポテトが重ならないよう並べ、表面の水分を直接焼き飛ばします。
● 解決法2 フライパンで煎る
油を引かずに弱〜中火で煎ることで、ポテト自体から染み出た油を利用して表面を再加熱し、カリッとした質感を取り戻します。
というわけで、ベータ化したシナシナポテトに出会ったら、科学のアプローチで復活を試してみてはいかがでしょうか。
フライドポテトの触感は品種でも変わる?
さらに、フライドポテトの食感を大きく左右するのは、じゃがいもの品種によるでんぷんの含有量(固形分率)と細胞の結合の強さの違いです。
この違いによって、加熱時のアルファ化(糊化)の度合いや食感がガラリと変わります。
だんしゃくいも(粉質種)
だんしゃくいもは、でんぷん量が多い(約15〜17%)品種です。加熱してアルファ化すると水分を限界まで吸って細胞が大きく膨らみます。その結果、細胞同士の結合が自然に離れ、熱が通ると崩れやすい状態(粉っぽく)なります。
だんしゃくいもを揚げると内部の水分が効果的に抜け、でんぷんの網目構造が密に形成されるため、外側は軽やかなカリッと感、中は崩れるようなホクホク感になります。ただし、でんぷんが多い分ベータ化(老化)による水分の追い出しも顕著なため、「冷めると食感が一気に悪くなりやすい」という特徴があります。
メークイン(粘質種)
メークインは、でんぷん量が少なめ(約13〜14%)の品種です。でんぷん量が少なく水分率が高いため、アルファ化しても細胞が破裂せず、ペクチン(細胞をつなぐ物質)の結合がしっかり保たれます。加熱しても煮崩れせず、しっとりとした粘り(粘質)が残ります。
そして、フライドポテトとして揚げてもでんぷんの網目構造があまり密にならず、水分が内部に留まりやすいため、外側のカリッとした硬さは出にくくなります。その代わり、中がみずみずしく、滑らかな口当たりに仕上がります。でんぷん絶対量が少ないため、冷めてもボソボソになりにくいメリットがあるのです。
品種も選びながら、あなた好みのフライドポテトを選んでみましょう。

