血液型占い、星占い、四柱推命。最近ならMBTIも加わるでしょうか。
私たちは昔から、自分がどういう人間なのかを、何かに言い当ててほしいと願ってきました。
その願いは、就職活動やキャリアの場面でもおなじみです。適性検査を受け、強みと弱みを言語化し、自分の輪郭をなんとかつかもうとする。
そんな「自分を知りたい」という欲求に、いま科学の側から応えようとしているのが遺伝子検査です。
遺伝子検査キットはネットで市販されており、病院に行かなくても、郵送だけで結果を受け取ることができます。
これは新しい占いなのか、それとも実用的な健康管理のツールなのか。
実際に自分の遺伝子を調べてみたので、その体験と、そこで使われている化学の技術について考えていきます。
300種類以上の「なりやすさ」が並ぶ

検査で閲覧できた遺伝情報は、300種類以上。
たとえば、すい臓がんになるリスクは「やや高い」
円形脱毛症になるリスクは「やや低い」
といった判定が、ずらりと一覧で並びます。

こうしたキットは一般に、唾液などの検体からDNAを取り出し、一塩基多型(SNP:塩基配列のうち1か所だけが人によって異なる部分)を読み取ることで、体質の傾向を推定しています。
ヒトのゲノム(ある生物がもつ遺伝情報の全体)は、約30億の塩基対からできています。けれども、人と人の違いは、そのうちわずか0.1%程度にすぎません。
全30巻・3万ページの百科事典にたとえるなら、他人と食い違っているのは30ページ分ほど、ということになります。その30ページを読み取る技術が、遺伝子検査を支えています。
DNAは、糖とリン酸、そして4種類の塩基からなる化学物質です。それを試薬で取り出し、特定の配列に反応する仕組みで検出する。自己分析のツールのように見えて、中身はまぎれもなく化学の応用なのです。
遺伝子は運命を決めない
ただ、結果を眺めながら痛感したのは、これは診断書ではないということです。
実際に症状が出るかどうかには、遺伝以外の要素が大きく関わります。
食事や睡眠といった生活習慣、ストレスの有無、育ってきた環境など……。
遺伝子は、いわば体質の設計図の一部にすぎません。
ですから「すい臓がんのリスクがやや高い」と出たからといって、それが将来を言い当てているわけではありません。逆に「やや低い」と出た項目に、絶対の安心が約束されているわけでもありません。
遺伝子検査でわかるのは確定した未来ではなく、あくまで統計的な傾向です。これだけで病気を診断することはできません。
ちなみに私は、「体脂肪率が高い傾向」という結果も受け取りました。
正直なところ、余計なお世話だと感じるデータです。とはいえ、知らないよりは知っておいたほうがよいのでしょう。
占いと違うのは、行動に移せること
では、遺伝子検査は占いと何が違うのでしょうか。
占いは、当たったかどうかを後から確かめるところに楽しみがあります。
一方で遺伝子検査の結果は、今日の行動を変える材料になります。
リスクがやや高いと出た病気について、検診の頻度を上げる。生活習慣を見直す。気になる症状が出たときに、早めに医師に相談する。
診断はできなくても、身構えることはできるのです。
自分の体質を知り、なりやすい病気を避けるように行動する。そのための道具として考えるなら、この検査はずいぶん誠実な部類に入るのかもしれません。
自分を言い当ててほしいという願いは、おそらくこれからも消えないでしょう。その願いに化学が答えを返してくれる時代を、私たちはどう使いこなしていけばよいのか。
まずは体脂肪率の指摘を素直に受け止めるところから、始めてみようと思います。


