-フッ素樹脂に惚れて40年- 岡山県吉備中央町のPFOA汚染に思う。

コラム

 まず健康被害や環境破壊に遭われた方々には心からお見舞いを申し上げ、行政及び関係機関による継続的なモニタリングと十分な救済が行われることを望むものである。

 PFOAやPFOSといった健康被害リスクが指摘されている物質をPFASという総称で報道するMediaの姿勢に聊かの違和感を持っている。PFASとはPer- and Polyfluoroalkyl Substancesの略称で、炭素―フッ素結合を含む有機フッ素化合物の総称である。そのPFASは1万以上の物質があるといわれおり、その中で既に禁止されているのはPFOS・PFOA・PFHxS・C9-C14 PFCAの4物質しかない。今回の事案のように原因物質がPFOAであることが判明している案件で、PFASという総称をタイトルとして報道することには反対である。

 そのためPFASと報道されている事案にはあまり興味を持てないが、40年近くフッ素化学と関わる仕事をしてきた者として今回の岡山県吉備中央町の事案は気になってしかたがない。PFOAを含んだ活性炭が吉備中央町に長期保管されていたことが原因であるが、まだ未公開となっている部分は多い。

 PFOAが規制されたのはEUにおいてECHA(欧州化学品庁)がSVHC(高懸念物質)に指定したのが最も早く、2013年である。アメリカでは2006年に自主削減計画を制定し、2015年に向けて製造・使用の廃止が決定された。Dupont社(当時)などのフッ素化学メーカー各社はそれに先立って取り扱いを終了している。日本においてはかなり遅れて2021年に化審法でPFOAの製造・輸入が禁止されている。ECHAではPFASすべてを規制する動きをしているが、経済的、社会的な影響が膨大であることは否めない。

 吉備中央町の問題。今後の推移を見守りたいが、違法性の追及や違法行為の摘発というより、規制や制度が追いつかなかった領域の事故という見方ができるかもしれない。そして他の地域でも数多くの類似の事案が潜在していることは想像に難くない。

 もちろん、関係企業には仮に法的な製造責任がなくても道義的な責任を果たし、事実関係の究明に協力してほしい。また、報道に携わる業界も企業を糾弾して視聴率や読者率を上げるのではなく、環境問題は私達一人ひとりに関わる問題であるということを啓発するものであってほしい。

 私自身も、この案件から何を学ぶべきなのかを考えてみたい。

 まずは身の回りや倉庫に内容物不明の長期在庫やサンプルが無いか、保管状態の確認や当該製品のSDS確認が必要である。少し乱暴かもしれないが、保管者不明な製品は早期に処理することを考えたい。SDS未添付の物は受け入れないという原則も順守したい。

 先日、2000年頃に外資系企業の日本法人から販売されていた製品についてSDSの提供依頼を受けた。そのときの日本法人は既に閉鎖されており、現在、自分がアドバイザーとなる会社が、その外資系企業の日本の代理店をしているためSDSの依頼があったものである。ただ、その製品は既に廃番となっており、その後、同等品が上市されてはいるが、その客先は2000年以降購入がないためGrade(品番)の変遷もご存知なく、長期在庫品の処分のためのSDS要求であった。運よくメーカー担当者のPCに当該製品のSDSが残っていたため提供することが出来た。

 メーカーではGradeの統廃合や環境規制のもとで成分の変更を余儀なくされ、Gradeの刷新が随時行われているため現存しない製品のSDS要求が増えるであろうと予想される。廃番となった製品のSDSは当時の規制に基づいて作成されているので、現在の規制で義務付けされている事項が記載されていないことや、古いSDSの内容が現在の規制に合致していない場合もありそうである。

 法的には遡及はされないようであるが、準備の必要性を感じている。SDSの管理もファイリングに工夫が必要である。現在SDSの更新時期は、『重要な新情報が得られた時点で遅滞なく更新』が原則となっているため、更新の頻度も高く、ファイル数も増える。現行正本の一本化や履歴の残し方も工夫しながら行っていく必要があるだろう。

 前述した吉備中央町のPFOA汚染事案については、責任の擦り付け合いや犯人探しではなく、今後同類の事件が発覚したときに手本となるような解決策が関係者で話し合われることを切に望むものである。

化学の外野席カズノミヤ
フッ素樹脂を愛し続けて40年。大手総合商社でフッ素樹脂をはじめエンプラ、汎用樹脂などを担当。現在は小さな商社でアドバイザーとしてフッ素樹脂関連製品の販売に関与している。